亜鉛不足はなぜ起きるの?

亜鉛不足

亜鉛が足りなくなる原因

亜鉛が必要量より足りなくなる原因として、次のようなことが考えられます。

  1. 摂取不足 摂取する亜鉛の量が絶対的に足りていない
  2. 吸収不全 摂取した亜鉛がきちんと吸収されない
  3. 需要増大 妊婦・授乳婦では赤ちゃんへ亜鉛の受け渡しがあり、一般女性より多くの亜鉛を摂取することが求められているが、実際は摂取量が不足している
  4. 排泄増加 便、汗等から過剰に排泄されて足りなくなってしまう

亜鉛不足

年代ごとの特徴

亜鉛が身体の中に足りなくなってしまう原因はいろいろとありますが、それ以外にも各年代ごとに亜鉛が不足しやすい特徴があります。

赤ちゃん・子ども

摂取不足

  • 母親が病気や無理なダイエットを行った結果、母乳に含まれる亜鉛が減少し、母乳から亜鉛を補充していた赤ちゃんが亜鉛不足に陥る可能性があります。
  • 子どもの少食や偏食は、亜鉛の摂取量が不足しますので、子どもの亜鉛不足の原因の1つです。

吸収不全

  • 吸収不全とは、腸から亜鉛などの栄養素の吸収がうまくいかなくなる状態です。「腸性肢端皮膚炎(ちょうせいしたんひふえん)」は、腸からの亜鉛の吸収がうまくいかず皮膚炎や下痢、脱毛等を起こす稀な病気です。先天性のものと、母乳の亜鉛不足のために発症する後天性のものがあります。

需要増大

  • 赤ちゃんの成長期には、母乳に含まれている亜鉛だけでは足りなくなることがあります。その結果、亜鉛不足になってしまうのです。

赤ちゃん

大人

摂取不足

  • 亜鉛は肉類や魚類に多く含まれています。動物性たんぱく質を日常的にあまり食べない人は、亜鉛不足が起きる可能性が高くなります。
  • ダイエット等で食事量が少なく栄養が十分に摂れていなかったり、偏食を続けたりすると、亜鉛不足になりやすいといえます。

吸収不全

  • 食べ物の成分の中には、腸からの亜鉛の吸収を妨げるものがあります。
    よく知られているものは、コーヒー、オレンジジュース、カルシウム、未精製の小麦や種子等の穀類・豆類に多く含まれる「フィチン酸」や、「ポリリン酸」などの食品添加物があります。1日に必要な亜鉛を摂っていても、吸収を妨げる食品の摂取量が多いと、亜鉛が十分に吸収されず亜鉛不足になるおそれがあります。
  • 病気が原因で亜鉛の吸収が悪くなる可能性があります。
    肝臓病(慢性肝炎、肝硬変等)、炎症性の腸の病気、腸を手術で切除した場合に、腸からの吸収がうまくいかず亜鉛不足になる可能性があります。
  • 抗生物質などの一部の薬には、亜鉛とくっつく性質があります。くっついた亜鉛は消化管から吸収することができません。その結果、身体の中で亜鉛不足を引き起こす可能性があるのです。

排泄増加

  • 人は毎日、利用できなかった亜鉛を主に糞便として身体の外に排泄しています。病気が原因で亜鉛を身体の外に排泄する量が増える場合があります。肝臓病(慢性肝炎、肝硬変等)、糖尿病、腎臓病がある人は、尿からの亜鉛排泄量が増える事が知られています。人工透析を受けている人は、透析液から亜鉛の排泄が増えてしまいます。
  • 関節リウマチ、パーキンソン病、痛風、糖尿病、不眠症、うつ病、てんかん等の治療に使われる薬の中に、亜鉛の排泄を増やしてしまうものがあります。
    これらの薬を長期間内服していることで、亜鉛不足になる可能性があります。

高齢者

摂取不足

  • 年令を重ねることで食が細くなる方が多くなります。その結果、亜鉛摂取量が減ってしまいます。

吸収不全

  • 高齢になると食べ物を消化吸収する力が弱くなるため、亜鉛の腸での吸収が悪くなる可能性があります。

排泄増加

  • 高齢者は、慢性の病気(肝臓病、糖尿病、腎臓病等)を持っている方が少なくありません。
    亜鉛の吸収に影響を与える可能性がある薬剤を長く服用している人もいます。その結果、亜鉛の吸収が悪くなったり、常用薬により排泄が多くなり、亜鉛不足が起きやすくなる可能性があります。

こんな方も注意

ほかにも病気療養中のかた、妊婦・授乳婦、スポーツ競技者が亜鉛不足になりやすいといわれています。なぜ、亜鉛が不足しやすいのでしょう。

病気療養中

  • 病気の治療中には、食事ではなく点滴などの静脈注射で栄養や水分を取ることがあります。長期に点滴から栄養を補充するのであれば、亜鉛などの食事から摂る事ができるミネラルが不足する事があります。
    大人だけでなく子どもも高齢者もおこる可能性があり、全年齢で注意が必要です。

妊婦・授乳婦

  • 妊娠中・授乳中には、亜鉛の必要量がとても多くなります。
    妊娠中は、赤ちゃんの身体をつくるタンパク代謝や神経系の発達のために、亜鉛を消費する量が増えます。さらに母乳育児では、亜鉛は母乳にも含まれるため、母乳として身体の外に出ていく量が増えるのです。妊娠中・産後の体重増加を防ぐために、過度な食事制限を行った結果、亜鉛の摂取量が足りなくなってしまう可能性があり、特に注意が必要です。
    『亜鉛不足を改善するためには』のページ「日本人の1日あたり亜鉛推奨量」参照

妊婦

スポーツ競技者

排泄増加

  • 激しいスポーツをする競技者では、汗や尿からの亜鉛排泄量が増えるため、日常生活に比べて、亜鉛不足になりやすいといわれています。

需要増大

  • 激しいスポーツでは、筋肉などで亜鉛の必要量が特に多くなります。その結果、亜鉛が不足しやすくなります。
監修:
帝京平成大学大学院 健康科学研究科
特任教授 児玉 浩子 先生