うちの子、身長の伸びが遅いかも

低身長

子どもの成長は個人差が多く、ゆっくり成長する子どももいれば、早く成長する子どももいます。そう理解していても周りの子どもとつい比べてしまうのが、親心ではないでしょうか。周りと比べてお子さんの身長が低いかも…と思った場合は、正しくお子さんの成長を評価してみることが重要です。子どもの身長・体重は健全な成長を評価する指標でもあり、正しく評価することで低身長などの発育障害にも早く気がつくことができます。

各年齢における平均身長とは

子どもの身長は、常に一定のスピードで伸びているわけではありません。生まれたばかりの赤ちゃんの平均身長は約50cm、4歳ごろには2倍である約100㎝にまで成長します。その後は年間約6㎝ずつ伸びていき、その伸びは思春期に入るとさらに急速になります。成長のピークは、おおむね男子13歳、女子11歳です。声変わりや初経を境に伸び方はゆるやかになり、やがて止まります。

平均身長より低くても、すぐに心配する必要はありません。小柄な両親から生まれた子どもは小柄であることも多く、体質的なものもあります。しかし、まれに病気で身長の伸びが遅れていることもあるのです。お子さんの成長曲線を描いてみて、母子手帳などに記載されている成長曲線と比べてみましょう。成長速度に不安を感じられたら、かかりつけの小児科に相談してみることをオススメします。なぜなら、治療が必要な低身長の場合もあるからです。

小児の低身長とさまざまな原因

子どもの低身長にはさまざまな原因があります。身長の伸びには、乳幼児では主に母乳やミルクを飲む量などの栄養摂取が大きく影響する他に、小児期では成長ホルモンや甲状腺ホルモンなどのホルモン分泌が大きく影響しています。低身長だからといって、すべてが病気というわけではなく、虐待やいじめなどの心理的な問題が発育障害の原因となることもあります。

小児の低身長と亜鉛の関係

子どもの身長の伸びには多くの栄養素が必要ですが、微量元素(必須ミネラル)として亜鉛が重要な役割を果たしています。タンパク質の合成、成長ホルモンや性ホルモンの産生、DNAの複製などに深く関わります。亜鉛不足が原因で成長が妨げられ身長が適切に伸びないこともあります。
亜鉛は人の身体にとっては欠かせない必須ミネラルの一つです。

亜鉛はさまざまな酵素活性に必要な栄養素

人の身体は、食事から栄養素を吸収して、さまざまな化学反応によりエネルギーに変換しています。その化学反応に欠かせないのが酵素です。体内ではたくさんの酵素が作られ、使われています。300種類以上の酵素の働きには亜鉛が必要とされており、体内でのタンパク質の合成、成長ホルモンや性ホルモンの産生などに関与しています。そのため、子どもが亜鉛不足になると、身長の伸びや体重の増加に障害が起こってしまうのです。

小児における亜鉛不足の原因

子どもが亜鉛不足となる原因には、摂取不足や吸収障害が多いと言われています。赤ちゃんの場合、お母さんが病気や無理なダイエットをしてお母さん自身が亜鉛不足になると、母乳に含まれる亜鉛も不足してしまいます。子ども自身が小食だったり、偏食が激しい場合も亜鉛不足になりがちです。また、まれではありますが先天的な病気で亜鉛不足をきたすこともあります。
また、母乳を出す乳腺細胞から亜鉛が母乳中にでてこない遺伝子疾患もあり、お母さんは亜鉛不足でなくても赤ちゃんが亜鉛不足なる病気の存在も知られています。

小児の低身長にお悩みの方は医療機関へご相談を

このように、子どもの低身長は治療が必要な病気が原因である場合があります。お子さんの低身長が気になる場合は、適切な治療を早期に受けるためにも、かかりつけの小児科に相談してみましょう。実際に「最近背が伸びない」という理由で病院を受診したら、大きな疾患が見つかった、という事例もあります。早期に低身長の原因を突き止め、原因となる病気を治療したり、適切な成長を促す治療を行うことで、お子さんの健やかな成長を助けることができるでしょう。

低身長の原因となる主な病気

  • 成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどのホルモン分泌異常:成長ホルモン分泌不全性低身長症、甲状腺機能低下症など
  • 染色体の異常:ターナー症候群、プラダー・ウィリー症候群**など
  • 小さく生まれたことが原因となるもの:SGA性低身長症***
  • 骨、軟骨の異常:軟骨異栄養症
  • 主要臓器の病気(心臓病、肝臓病、腎臓病など)
  • 栄養不良(主に亜鉛を含むタンパク質の不足など)
ターナー症候群: 女性が通常持っている2本のX染色体を1本しか持っていない、または(或いは)X染色体の一部に欠損があることが原因で起こる低身長です。
**プラダ―・ウイリー症候群: 15番染色体の異常による病気で、低身長だけでなく性腺の発育不全や、出生後から筋緊張の低下などがみられ、乳幼児期には肥満や発達障害などの症状が見られます。
***SGA性低身長症: 何らかの原因で子宮内の胎児発育が滞る病気です。妊娠満期で生まれても身長や体重の小さい子どもや、早産で妊娠週数に比べて小さく生まれた子どもは子宮内発育不全と呼ばれます。
監修:
帝京平成大学大学院 健康科学研究科
特任教授 児玉 浩子 先生