残業が続いたときや睡眠時間が十分にとれないときに風邪をひいた経験はありませんか。このように、身体が弱っているときに風邪をひきやすくなるのは、風邪などのウイルス感染から身体を守る免疫力が弱まっているからです。
疲労、睡眠不足、運動不足、ストレス、栄養不足(低栄養)は、免疫力を低下させます。免疫力が低下すると、体内でのウイルスや細菌などの増殖を阻止できなくなります。免疫力の維持には、規則正しくストレスのない生活、そして栄養バランスのよい食事が大切です。
感染症と亜鉛の関係
亜鉛は免疫システムにさまざまなかたちで関与していることが、最近の研究で明らかになっています1)。免疫システムの司令官(ヘルパーT細胞)、ウイルスや細菌を掃除・排除する免疫細胞(マクロファージや好中球、ナチュラルキラー細胞)、免疫システムを構成するたんぱく質(補体)などに亜鉛は関わっています2)。また、亜鉛が免疫反応における情報伝達物質として働いていることが報告されています3)。亜鉛は免疫力の維持に重要なはたらきを持っているのです。
亜鉛が不足すると免疫機能に関連する細胞の活性が弱まるので、感染症にかかりやすくなります。体調不良で食欲が落ちて食事量が減ると、ますます亜鉛が不足する悪循環に陥ります。
亜鉛は体内で産生できないので、毎日の食事からとる必要があります。亜鉛を多く含む食品をとる際は、抗酸化作用をもつビタミンB群・C・Eを含む食品も同時に摂取すると、感染症の予防効果がアップします。
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免疫力維持に必要な主な栄養素
栄養素 | 種類 | 多く含まれる食品 | |
---|---|---|---|
ミネラル類 | 亜鉛 | 魚介類、肉類、穀類、種実類 | |
セレン | 魚介類、肉類、卵 | ||
銅 | レバー、魚介類、種実類、豆類、ココア | ||
ビタミン類 | B群 | B1 | 肉、豆、玄米、チーズ、牛乳、緑黄色野菜 |
B2 | 肉、卵黄、緑黄色野菜 | ||
B6 | レバー、肉、卵、乳、魚、豆 | ||
B12 | レバー、肉、魚、チーズ、卵 | ||
C | 緑黄色野菜、果物 | ||
E | 胚芽油、大豆、穀類、緑黄色野菜 | ||
ω3系不飽和脂肪酸 | α-リノレン酸 | シソ油、エゴマ油、キャノーラ油、大豆油 | |
※免疫力維持には上記以外に細胞成分となるアミノ酸(たんぱく質)や糖類なども必要です |
農林水産省ホームページ「健やかな食生活のために」を参考に作表
1)西田圭吾:ここまで分かった亜鉛の免疫システムにおける役割. 日衛誌 68: 145-152, 2013
2) Shankar AH et al:Zinc and immune function:the biological basis of altered resistance to infection. Am J Clin Nutr 68: 447S-463S, 1998
3)Kitamura H, Morikawa H, Kamon H, et al: Toll-like receptor-mediated regulation of zinc homeostasis influences dendritic cell function. Nat Immunol 7: 971-977, 2006
監修:
帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科
学科長・教授 児玉 浩子 先生