亜鉛で元気

味がおかしい

「何を食べてもまずい」、「味がわからない」、あるいは「本来の食材の味がしない」、「料理の味つけが塩からくなったと家族に言われる」――これらは味覚障害の兆しかもしれません。
味覚障害になると、食べる楽しみを失い、食事が苦痛になってしまいます。食欲がなくなり食事量が減れば栄養不足(低栄養)になり、健康が維持できなくなってしまいます。耳鼻科医を対象にした2003年の調査によると、わが国における味覚障害の患者数は年間24万人にものぼり1)、決して他人事ではない身近な病気になっています。


1)Ikeda M, Aiba T, Ikui A, et al: Taste disorders: a survey of the examination methods and treatments used in Japan. Acta Otolaryngol 125: 1203-1210, 2005

味覚障害の症状と原因

味覚障害にはさまざまな自覚症状のサインがあります。甘味、酸味、塩味、苦味、旨みが感じにくくなったり、渋味や金属味など異常な味を感じたり、料理の味つけがおかしく感じたり、自分が作った料理が甘すぎたり、塩からくなりすぎたり、家族や周囲の人が異常に気づくこともあります。

    味覚障害のサイン

  • ◆ 何を食べてもまずい
  • ◆ 口が渇く
  • ◆ 口の中がネバつく
  • ◆ おがくずがたまる感じがする
  • ◆ 舌がピリピリする
  • ◆ 何を食べても苦い
  • ◆ 特定の味がわからない
  • ◆ 塩味がきつい
  • ◆ 金属味がする
  • ◆ しょう油味が苦く感じる
  • ◆ 本来の食材の味がしない
  • ◆ 口の中にトゲがある感じがする
  • ◆ 味がしない、あるいは薄く感じる
  • ◆ 味が濃く感じる
  • ◆ 塩味と酸味を間違える
  • ◆ 渋味がする


味覚障害になる原因はさまざまで、原因が特定できないものもあります。もっとも多いのは薬による薬物性味覚障害で(21.7%)、その他には原因不明の特発性味覚障害(15.0%)、亜鉛欠乏性味覚障害(14.5%)、心因性味覚障害(10.7%)などがあります。また、病気が原因で生じる風味障害(嗅覚障害)、全身疾患性味覚障害、口腔粘膜疾患、末梢神経障害、中枢神経障害もあります2)
近年、高齢者の亜鉛欠乏性味覚障害が増えています3)。食事からの亜鉛の摂取量不足に加え、高血圧などの慢性疾患の治療薬に亜鉛の排出を促す作用を持つものがあるからです3)

2)Hamada N, Endo S, Tomita H: Characteristics of 2278 patients visiting the Nihon University Hospital Taste Clinic over a 10-year period with special reference to age and sex distribution. Acta Otolaryngol(Suppl) 546: 7-15, 2002
3)冨田 寛:薬剤性味覚障害. 味覚障害の全貌 316-345, 2011

    味覚障害の主な原因

  • 薬物性味覚障害:薬が原因
  • 特発性味覚障害:原因不明(血中の亜鉛濃度が基準内でも潜在性の亜鉛欠乏の可能性もある)
  • 亜鉛欠乏性味覚障害:亜鉛欠乏
  • 心因性味覚障害
  • 風味障害(嗅覚障害):ウイルス感染による嗅覚神経や味覚神経の障害、感冒後などが多い
  • 全身疾患性味覚障害:糖尿病、急性・慢性肝障害、腎不全、甲状腺機能低下、胃・腸管切除など
  • 口腔粘膜疾患:カンジダ感染症、舌炎、舌苔、口腔内乾燥など
  • 末梢神経障害:舌・咽頭部の悪性腫瘍手術、中耳や扁桃の手術、外傷、顔面神経麻痺など
  • 中枢神経障害:脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、頭部外傷、多発性硬化症、末梢神経障害など
  • 放射線治療
  • ※ ②③⑥は亜鉛不足が関与している

厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル-薬物性味覚障害.2011より作表

味覚を感じる仕組み

味の判別は、舌や上顎、のどの奥に存在する「味蕾(みらい)」が関わっています。味蕾は目に見えないほど小さな味センサー(味を感じるセンサー)で、食べ物が口の中に入り唾液と混ざると、味蕾の中にある「味(み)細胞」が味を感じ取って脳に伝達し、味を判断します。

味覚障害には亜鉛が深く関わります。味細胞は常に生まれ変わっていますが、生まれ変わりには亜鉛が必要です。そのため亜鉛が不足すると、新しくできる味細胞の数が死滅する細胞の数より少なくなり、味センサーが正常に機能しなくなってしまいます。味蕾の萎縮でも味覚能力が衰え、味情報は正確に脳に伝達できなくなることもあります。
高齢者は、加齢により味センサーの機能が低下し、唾液量も減少し、味蕾にとって重要な栄養素である亜鉛も不足しがちになるので、味覚障害を起こしやすい状態といえるでしょう。

亜鉛は体内では産生できず、また貯蔵場所がないことから、毎日食事から摂取するしかありません。亜鉛は牡蠣や肉に多く含まれるので、極端な野菜中心の食事や少食を続けていると亜鉛不足をまねく場合もあります。肉や魚介類の少ない食事では、亜鉛が十分に摂取できていない可能性もあります。
また、亜鉛不足は食欲減退を起こすこともあるので、味覚障害をきたすとさらに食欲減退を伴う亜鉛不足が進むという悪循環を引き起こす場合もあります。

亜鉛不足の悪循環

味覚障害のセルフチェック

その症状、味覚障害かもしれません
ひとつでも当てはまる場合は「味覚障害」の心配があります。専門の医療機関を受診しましょう!!

特に
✔ 飲んでいるお薬の種類が多い
✔ ストレスが多い
✔ 栄養が偏っている
方は注意しましょう!

味覚障害セルフチェックシート

味が薄く感じて、しょう油や塩、砂糖を多くかける
何も食べていないのに、常に口の中が苦いなどの味を感じる
何を食べてもまずく、最近食欲が低下して体重が減ってきた
甘いものが苦く感じるなど、いつもと違う味を感じる
塩味がとがった感じがして不快に思う
以前まで好きだったものが嫌いになって、食べられなくなった
何を食べても味が全くしない
甘味だけがわからないなど、特定の味がしない
食べ物の風味(香りや味わい)がわからない


監修 兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師 任 智美先生

味覚障害のセルフチェックシートのダウンロードはこちらから

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