出生時の身長は平均約50cmで、乳幼児期に十分な栄養が摂取できていれば、4歳で約2倍の100cmに成長します。身長の伸びは、小児期では毎年平均約6cm、思春期に入ると急速になり、声変わりや初経を境に伸び方はゆるやかになり、やがて止まります。
平均身長より低くても、小柄な家系で体質的なものであれば心配いりませんが、まれに病気で身長の伸びが遅れていることがあります。母子手帳などの成長曲線*を利用すると成長のスピードがわかりやすいので、記録を元に描いてみましょう。成長速度に不安を感じたら小児科に相談してください。
*成長曲線:学校保健や診療で用いられている子どもの発育を評価するうえで活用されているグラフ。インターネットで「成長曲線」を検索すると、各サイトで男女別の「0~2歳」「0~6歳」「0~18歳」のシートがダウンロードできます。
〔参考〕 日本小児内分泌学会「成長評価用チャート」
http://jspe.umin.jp/medical/chart_dl.html
小児の低身長と原因
小児の低身長は、遺伝や体質、病気によるものもありますが、栄養不良や虐待、さまざまな病気が原因の場合もあります。原因が栄養状態の悪さによるものなら食生活を見直すことが必要です。
- ● 成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどの内分泌異常:成長ホルモン分泌不全性低身長症、甲状腺機能低下症など
- ● 染色体の異常:ターナー症候群*、プラダー・ウィリー症候群**など
- ● 子宮内発育不全:SGA性低身長症***
- ● 骨、軟骨の異常:軟骨異栄養症
- ● 心臓病
- ● 肝臓病
- ● 腎臓病
- ● 栄養不良
- ● 亜鉛不足
- *ターナー症候群:女性が通常持っている2本のX染色体を1本しか持っていない、また染色体の一部に欠損があることが原因で起こる低身長です。
**プラダ―・ウイリー症候群:染色体の変異による病気で、低身長だけでなく性腺の発育不全や、出生後から筋緊張の低下などがみられ、乳幼児期には肥満や発達障害などの症状が見られます。
***SGA性低身長症:何らかの原因で子宮内の胎児発育が滞る病気です。妊娠満期で生まれても身長や体重の小さいこどもや、早産で妊娠週数に比べて小さく生まれたこどもは子宮内発育不全と呼ばれます。
低身長の原因となる主な病気
一般社団法人日本小児内分泌学会ホームページより引用改変
小児の低身長と亜鉛の関係
成長期の子どもにとって亜鉛は重要な栄養素(ミネラル)で、体内でのたんぱく質の合成、成長ホルモンや性ホルモンの産生、DNAの複製などに関わります。
亜鉛不足になる要因はさまざまですが、乳幼児と小児の亜鉛不足は摂取量不足や吸収障害が多く、まれですが先天的な病気で亜鉛不足をきたすこともあります。
※外部サイト(当社が業務委託している株式会社QLIFE)に移動します。

- ● 摂取不足
- ● 吸収障害:慢性炎症性腸炎、難治性下痢症、フィチン酸の過剰摂取、鉄剤の過剰投与
- ● 代謝亢進:過度なスポーツ
- ● 過剰排泄:糖尿病、腎疾患、治療薬の影響
- ● 先天性腸性肢端皮膚炎
小児における亜鉛不足の要因
成長期は亜鉛に限らず、すべての栄養素の必要量も増加します。成長期に亜鉛が不足すると身長の伸びが悪くなり低身長になります。亜鉛は体内で産生できず、貯蔵場所もないことから、毎日食事からとることが必要です。亜鉛は汗からも流出するので、激しいスポーツをする子どもは亜鉛の排出量が増えることにも留意して食事をとることが必要です。
監修:帝京平成大学 特任教授 児玉浩子 先生